活動内容5月総会時の卒業生による講演会皮弁の研究と開発

 

皮弁の研究と開発

よりよいQOLを目指して
東邦大学医学部形成外科学講座
丸 山   優(昭和46年卒)

 

より良いQOLを目指すことを基本理念におき、臨床・先端的研究・教育に積極的に取り組んできた。
教室は平成元年東邦大学医学部外科学第2講座より独立し形成外科学研究室新設に至り、平成5年東邦大学大森病院形成外科学講座へ昇格。平成8年に付属大橋病院に診療科を開設(主任:岩平佳子→大西清)、平成12年4月には付属佐倉病院に診療科を開設(主任:大西清→林明照)し、現在では大森病院を中心に付属三病院で診療、研究、教育を展開している。
これらの活動実績が認知され、2001年には第10回日本形成外科学会基礎学術集会(会長:丸山)を「New Waves from Daiba」のスローガンのもと主宰。形成外科領域での多彩な基礎研究成果を同年の米国基礎学術集会会長のE.Manders氏に国際創傷治癒学会会長のGW.Cherry氏にご講演いただき、名誉学長の杉村隆先生にもがんと遺伝子に関する特別講演をいただいた。来る2009年4月には、第52回日本形成外科学会学術集会総会(会長:丸山)の主催が決定している。

●皮弁移植術・マイクロサージャリー
新しい皮弁の開発や新たな応用を常に追求してきた。基礎的には、皮弁血管解剖、血管内視鏡による血行動態の解析など、皮弁による修復法を血行概念別に整理してきた。臨床的には、四肢、体幹、頭頚部など部位別に特殊性を加味した各種皮弁を開発・応用している。また低侵襲手術の概念を提唱し、主要血管を温存した皮弁や移植法の開発、必要構成成分のみの組織移植法の開発、内視鏡下の皮弁作成術や移動術、unit原理を加味した皮弁再建術を行っている。また、微小血管・神経吻合による遊離皮弁移植による各種悪性腫瘍切除後再建、切断肢(指)再接着手術などを行うなかで、新しい再建法の開発、手技の工夫を行っている。
1999年度の第26回日本マイクロサージャリー学会(会長:丸山)を本校主宰で開催し、今後のさらなる発展が期待される。

●低侵襲手術
Less invasive surgeryの概念のもと、全国に先駆け形成外科に鏡視下手術を導入した。顔面・体幹・四肢での低侵襲、整容を考慮した骨固定・皮下手術・血管内手術などや、器具の開発も行ってきた。
丸山は1996年に形成外科内視鏡手技研究会を立ち上げ、第1回の会長の役を果たした。本会は2001年より形成外科手術手技研究会へと発展し、現在に至っている。

●Tissue expansion
本邦で初めてTissue expander法を行った当科では、これまでの基礎研究、豊富な臨床データの分析からmultiple expansionやsubacute rapid tissue expansion法などを開発し、さらに安定した結果を得ている。

●頭蓋顎顔面外科、先天異常
先天異常、悪性腫瘍切除後・外傷後変形、頭蓋底再建手術をはじめ、鏡視下での骨固定・骨切り術・腫瘍摘出術などの開発・工夫を行っている。
陳旧性顔面神経麻痺に対し、新たに開発された皮弁導入や再建法の開発による笑いの一期的再建を行い、治療成績の向上をはかり、神経再支配に関する基礎的研究を行っている。
顔面の再建では、機能・整容の両面を考慮したsubunit, miniunit principleを提唱、具現化し、解剖学的知見に加え、コンピュータ解析、先進医療の一環として3次元実体モデルなどを駆使して、形態の再現や術前後のシミュレーション評価を行い、機能面に加えて整容面での改善を行っている。
2004年には、EBMを基礎とする「治療の標準化」と「esthetic mind」をテーマとし、第22回日本頭蓋顎顔面外科学会学術集会(会長:丸山)を、六本木ヒルズ・グランドハイアット東京で開催した。また、同年Annual Meeting of the 4th International Simulation Surgery、第14回日本シミュレーション外科学会も主催している。
唇顎口蓋裂、手足の奇形をはじめとする各種先天奇形に対し、関連各科との協力体制のもとにチーム医療にあたり、実績を伸ばしてきた。その病因論的研究はもとより、unit理論を応用した新しい術法と患者の生涯にわたる総合的治療を目指している。

●ケロイド・肥厚性瘢痕
ケロイド、肥厚性瘢痕の予防および治療はもとより、アポトーシス、マトリックス分解酵素発現性などにつき、免疫組織学的検討解析を介し、病態究明に関する研究を行っている。分子レベルでの詳細解析により、瘢痕組織の増殖拡大を人為的に制御する基礎的実験系の確立、さらにはその臨床応用が期待され、更なる発展が望まれる。今後も病院病理・病理学講座と共同で研究・検討を行っていく予定である。

●再生医学、レーザー治療
骨膜弁とハイドロキシアパタイトによるcustom-madeハイブリッド型人工骨の開発・臨床応用・基礎的研究を行っている。今後長期的な組織学的検討、新生骨の三次元的解析、強度の評価、骨新生に関する免疫組織学的・分子生物学的検討、遺伝子レベルでの解明、蛍光抗体法や抗STRO-1抗体を用いた骨膜由来骨細胞の検出、証明などについての検討も念頭に開発を進めていきたい。
Q−swアレキサンドライトレーザーなどによる皮膚良性色素性疾患に対するレーザー治療とその臨床的検討を行っている。また、高齢化社会を控え、QOLの向上を目指す形成手技的anti-agingやしみに対するレーザー治療(自費診療)も、年々需要が高まっている。