活動内容5月総会時の卒業生による講演会母校の整形外科とともに

 

 

母校の整形外科とともに

整形外科学第2講座教授
 水 谷 一 裕  

1.はじめに  私は昭和48年3月本学医学部を卒業し、当時はご高名な教授が多くいらっしゃいましたが、西 新助教授の主催する整形外科学教室に入局しました。昭和62年茂手木三男教授のもと、講師を経て、昭和63年12月大橋病院へ移籍、平成10年1月より教授職を拝命致しました。その後、13年の歳月を経て、延べ人数で42名の医師が在籍し、4名のほか、7名に学位を授与出来ました。併せて、幾多の役職を拝命頂き、4学会主催させて頂きました。教室作りには外傷学を基本として、脊椎外科、関節外科(MIS-TKA、THA)、手の外科を中心に取り組んでおります。

2.骨格筋の組織学的、組織化学的特性について  家兎を用いて、骨格筋の凍結切片を作成して、Routine ATPase、コハク酸脱水素酵素、LDH、NADH・TR、A1-Pase、Ac-Pase等を染色し、Type1、2線維の酵素特性を明らかにした。次に手の外科における絞扼性末梢神経障害での脱神経、神経再支配、筋萎縮を明らかにした。同様に骨格筋の加齢的変化について、大腿骨頚部骨折、変形性膝関節症例を用いて検討した。続いて腰部傍脊柱筋を用いて、教室の平は学位を授与頂きました。以上より2004年に第5回APFSSHで筋病理についての講演を行いました。

3.手の外科の診療について  本学では飯野講師、平澤教授が担当されていましたが、神経、腱などの機能的修復に興味を持ち、手の外科を選択しました。昭和60年頃、順天堂大の山内裕雄教授の手の外科の実際を見学させて頂きました。  平澤精一前教授が主催されて11年目の2007(平成19)年2月に第21回東日本手の外科研究会を担当した。臨床的には手指側副靱帯損傷、槌指、屈筋腱損傷、手根骨骨折、デュピュイトラン拘縮、母指多指症、肘関節脱臼、小児の上肢骨折、種々の末梢神経損傷と再建術、橈骨遠位端骨折など、多岐に渡り研鑽を重ね、多くの論文を発表しました。

4.骨粗鬆症と病的骨折について  総人口の22%が65歳以上となり、退行性骨粗鬆症による病的骨折は、医療現場の直面する大きな課題であります。特に大腿骨頚部骨折はQOLに最も大きな影響を来たし、25%は寝たきりとなる。さらに脆弱性脊椎椎体骨折、上腕骨近位端骨折、橈骨下端骨折なども遭遇しています。以上、臨床的に両側例、骨密度、影響因子など、種々のロコモ研究に取り組み、複数の教室員が、学位を取得しています。2009(平成21)年7月には、第21回日本運動器リハビリテーション学会を主催し、多くの同門の先生方のご支援のもと、600名前後の参加を頂き、成功裏に終えることが出来ました。

5.疼痛に対するレーザー治療(LLLT)について  整形外科の診療で、低反応レベルレーザーは肩関節周囲炎、テニス肘、狭窄性腱鞘炎、関節リウマチ等で応用されています。いわゆる五十肩に対して1W630nmの半導体レーザーを用いて、検討した結果、VAS値は有意に低下し、84.2%で有効でした。さらに血清PGE2値は有効例でレーザー照射前後で有意に低下していたことは、LLLTによりアラキドン酸カスケードが抑制された結果と考えられた。さらにその変化値は術前のPGE2値と有意な相関関係を認めました。しかし、有効例であっても血清PGE2値が照射後、基準値の4.4pg/ml以下例は34.6%しかなく、疼痛緩解には複合的因子の関与が示唆された。以上より、低反応レベルレーザー治療以下LLLTは疼痛緩解に有効であり、侵害受容性疼痛に対する感作作用を抑制すると考えられた。また、肩関節可動域について、内旋、屈曲、外転ともに有意な改善が得られ、リハビリにも有効と考えられた。2007(平成19)年7月多くの同門の先生方のご支援を頂いて、第19回日本レーザー治療学会を主催しました。  これらの研究により2編の英文原著論文を発表し、学位申請としました。

6.これからの展望  平成21年11月、本学卒の武者芳朗准教授が教授(病院)として昇任され、臨床的には脊椎疾患、特に頚椎外科を担当し、研究面では新しい生体材料の開発に取り組み、2名の学位論文を指導しています。現在、教室は新入レジデント3名を迎え、総勢16名となり、今後さらなる発展を目指して“良い臨床医”の養育に尽力して参ります。  今後とも同窓生による、同窓生のための、同窓生への一層のご理解とご支援を何卒宜しくお願い申し上げます。

 

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