活動内容5月総会時の卒業生による講演会大学病院における後発医薬品の導入と代替調剤の問題点

 

 

大学病院における後発医薬品の導入と代替調剤の問題点

東邦大学医療センター大森病院
心臓血管外科 小山 信彌(47年卒)

 

1、御礼と報告
今回、同窓会総会卒業生講演会に発表の機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。この場をお借りして、副院長3年、院長3年2期、合計9年間病院執行部に在籍していたときの御礼とご報告をさせていただきます。
まずは、新3号館建設に際しては、同窓生の皆様のあたたかいご理解と、ご支援と、貴重な浄財のご寄付により完成することができました。この場をお借りいたしまして御礼申し上げます。
さて、私の院長時代は、医学部の機構改革とあいまって、大森病院再整備事業立ち上げました。これは、新3号号館建設、診療科再編、電子カルテ導入を3本柱とするものです。
まず、大森病院の講座再編を基盤とする、診療科の再編を行いました。これがもっとも大変で、大森病院に、そして医学部に大きな変化をもたらしたと考えております。改革は一方で破壊と同じ意味を持つと考え、当時の医学部長の松島先生と、理事長の野口先生と蜜に連絡を取りながら、行ってまいりました。中でも松島先生のご理解と協力がなければ、講座再編は不可能でした。この改革は病院の、そして医学部の貴重な人材が大学を去ることにもなり、医学部同窓会からもご批判を受けました。しかしながら、基幹となる内科と外科がナンバーで区別され、さらに、同じ診療科を病院の中に2つずつ存在することは、患者さんの混乱を招くばかりでなく、効率よい診療体制をとる意味でもどうしても避けて取れないものと判断しました。
同時に取り組んだのが、院内のIT化であります。最終目標を電子カルテに置き、診療録管理センターを中心に準備委員会を立ち上げ、6年の歳月をかけて電子カルテを導入しました。現在でもさまざまな問題はありますが、1000床規模の病院としてはきわめて順調に進んでいると思われます。これは2004年から導入したDPCの運用には必要不可欠で、きわめてタイミングよくできたと感じております。この導入にあわせて、後発医薬品の採用を始めましたが、この点につきましてはDPCとあわせて後述いたします。
また、病院の名前が良い意味で世間に出るように、セカンドオピニオンにいち早く着目し、東京都特定機能病院連携会議において、最も早く全診療科のセカンドオピニオンに対応することを発表し、大変高い評価を得ることができました。現在でも月に数件でありますが相談に応じております。
最後に集大成という意味も含めて、医療評価機構による病院評価を受けました。準備委員長として、小児科の月本教授の下全職員一丸となって取り組みました。職種を超えた話し合いが連日行われ、職員同士のコミュニュケーションも良くなり、また、病院の中もすっきりし大変よかったと考えております。評価の結果は、大変満足できるもので、Ver.5を大学病院としては初めて一発で通ることができ、公表においては身に余るほどのお褒めの言葉をいただきました。
副院長時代も含めて、9年間大森病院の運営に携わることができ、さまざまの事柄はありましたが、何とか終了することができましたのは、同窓会の皆様のご指導、ご鞭撻によるものと感謝申しあげます。
2、医療制度改革におけるジェネリック医薬品
医療制度が大きな変化のときを迎えております。それは厚生労働省が、医療費削減と医療の安全と質の確保を目的に行っている医療制度改革にあると考えます。医療制度改革の中心的なものは、新臨床研修医制度と、特定機能病院を中心とする急性期病院に包括医療評価制度(DPC・Diagnosis Procedure Combination)が導入されたことです。
まず研修医の義務化により、それまで9割の卒業生がそれぞれの大学病院において研修していたのが、今年は5割を割る勢いで民間病院に就職しております。東邦大学においても、現在の学生の約半数が他の医療機関に就職します。これが、大学医局の崩壊、しいては講座の解消につながると考えられております。二つ目の包括医療評価制度導入は、今までの出来高払い制度と違って、医療に質とコスト意識をする必要性が出てきます。その中で、DPCが最初に導入された大学病院において、大きく変貌する必要が出て来ました。今回は、その変貌の一つとしての後発医薬品について医療センター大森病院での導入までの経緯、その手法、そして問題点について述べさせていただきます。
3、DPCとジェネリック
DPCは、今まで行ってきた、出来高医療評価制度とどのように違うかと申しますと、出来高制度では、医療行為のすべてをレセプトに記載し請求しておりました。そのため、医療行為におけるコストとレセプトは同じであり、「the more, the best」と言われた所以でもあります。それに対して包括医療評価制度は、診断群分類ごとの評価を行う(診断群分類ごとに診療点数が決定される)ため、医療費を請求するレセプトと医療コストは同じではなくなります。15年度の平均点数は1日当たり2718点でした。したがって、医療行為医の内容に関係なく、入院中どのような検査を施行しても、投薬を行っても全て同一金額の医療費が決定されることになります。従って、医療機関では、できるだけ無駄な検査(?)、投薬は控える必要が出てきます。つまり医療行為の中にコスト意識が必要になってきます。
包括評価に含まれるものは基本入院料、検査、画像診断、投薬・注射、1000点未満の処置です。したがって、入院中はどんなに検査をしても、高額の薬剤を使用しても全て包括に入ることになります。このような評価方式になってくると、医療に掛かるコストを、常に念頭に置き診療を行う必要が出てきます。ここで病院とすれば薬剤購入費の削減の目的で、ジェネリック薬品の導入を考えてくることになるわけです。そして同時に患者さんの自己負担分の軽減になり、ひいては医療費抑制におおきく貢献することが期待されることになります。
大森病院において平成15年DPC導入とともにジェネリック医薬品の使用を開始しました。その影響と効果と問題点について検討しました。
4、ジェネリック医薬品導入の効果と問題点
平成15年から入院において約60種類の注射剤のジェネリック医薬品を使用し、その効果は総収入に対して薬剤購入比が17%であったものが15%台まで低下し、その結果1〜1・5%程度の収益率改善となっています。
一方、ジェネリック医薬品の問題点として(1)品質への不安 (2)情報提供不足 (3)供給の安定性が挙げられています。まず品質への不安については、生物学的同等性新ガイドラインの施行や品質再評価によるオレンジブック掲載など、ほぼ信用できるものになりつつあります。
次に情報不足に関しては品質効果の同等性から、先発医薬品の臨床データ、副作用データは同等と考えられますが、最近のITの急速な進歩も情報の収集には大きく寄与するものと考えますが、供給の安定性についてはいまだ問題が多く、オレンジブックに掲載のものでも、製造中止等問題は多く、また全ての規格がそろっていないこともあり、ジェネリック医薬品を選定する時点で採用する医療機関が努力をする必要があります。
以上述べたように医療費節約のための効果は認めるものの、問題も多くあり、ジェネリック医薬品の普及には、特に「代替調剤可」となった経口薬剤に関しては、今後もう少しインフラの整備が必要不可欠であることも事実であります。
5、まとめ
今後、医療経済的に見ても、DPCが拡大するにつれてもジェネリック医薬品の導入は、大学病院といえども不可欠なものと思われます。だだ、ジェネリック医薬品の供給には、いまだ、問題点も多く、インフラの整備は早急に解決すべき問題を多く含みます。しかしながら、国の政策とあいまって、国民の納得いく透明性の基で、欧米諸国の真似をするのではなく、日本における独自な薬剤開発、供給システムを作るべきであると考えます。